【3】逢いたいという思い

Jさん:3*/フェム/独身/細身/歌手

しばらくの間、グループの彼女たちと話をしていたところ、
主催者だという女性が、私の居たテーブルに挨拶にやって来た。

私と同じグループの人たちは、彼女に次々に声をかけていた。
どうやら業界では有名な女性のようで、みんなそれぞれが知り合いのようだった。

その女性は私よりも10歳は年上の気がした。
背は低く、髪の色は金髪に近いボブで、身のこなしが柔らかだった。
パンク系、というのか、フェミニンというのか。
クールで、凛とした雰囲気を醸しつつも、体の線がとても女性らしい人であった。

私も、彼女に挨拶をした。

J:「はじめまして。気が合う子がいたらイイね。」

彼女はそう微笑んでくれて、次のグループへ行ってしまった。

私はその時会った人の中で、初めて見たこの彼女が、その日一番気になっていた。
彼女のどことなく寂しげで落ち着いた雰囲気と、なぜか私を知っているような落ち着いた話し方に、
もう少し話をしてみたいなと思った。
だが、この時は自分から声をかける勇気はなく、
他の人に囲まれる彼女を、離れたところから見ることしかできなかった。
私もグループの人たちに話しかけられ、彼女へ向いていたその思考はかき消された。

しばらく会が進んだころに、とある演奏がはじまった。
クラシック曲だったと思う。
そしてひとしきりの演奏が終わった後に、先ほどの主催者の女性が舞台に立った。

にわかに歓声が起きる。

私の視線も、その沸いた会場の方にくぎ付けになってしまった。

「彼女は何ものなの?」

そう隣の女性に聞いたところ、

?:「プロの歌手だよ」

と返された。

「名前は?」

?:「J」

「Jさん・・・」

歌手ということは、もしかするとHさんと同業者かもしれない。

Jさんが歌い始めた。
歓声はいつの間にかおさまり、会場内の会話のざわざわ感の中に、彼女の声がそっと存在感を醸し出す。
Jさんの歌声は、Hさんとは違う曲調の声だった。

とても色っぽく、会場の雰囲気を一気にしっとりしたものに変えていた。

私は前の方に空いている席を見つけたので、グループの席を立ちその前の席へ移動した。
話をせずに帰ったら、私は後悔するかもしれない。

Jさんと目が合った。
彼女は、Hさんを知っているのだろうか。
彼女はずっとこのビアンの世界で生きているのだろうか。
どういう人生を生きてきたのだろうか。
彼女に聞きたいことがあった。

私と話をしてくれるだろうか。


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