【1】踏み出した一歩

Jさん:3*/フェム/独身/細身/歌手

J:「と、私は思うけど、Hは純粋だからこんなことは言わなかっただろうね」

「Hさんは元気ですか」

J:「元気だよ。君に会いたがっていたよ。名簿を見て、君のことを嬉しそうに話したんだ。けれども、○君(恋人)が許してくれなかったみたい。あきらめな。Hもね、普段はここで歌っているんだよ。ほら」

彼女が数枚の写真を見せてくれた。
そこには歌うHさんがいた。
ライトを浴びて、美しいメイクをしていて、とてもかっこよかった。

「私も会いたかったです。でも元気なら良かったです」

そういう私を、どことなく寂しげな表情でJさんは見つめてきた。

J:「君だったら良かったのに」

「?」

J:「気づいてるでしょ。君だって、Hのこと気になっているんでしょ。」

私は、返す言葉がなかった。
初めてHさんに会ったときのワクワクを、ずっと忘れることができなかったからだ。

J:「でも君は鈍すぎる」

「笑」

J:「二次会に行かない?」

そう誘われたけれども、私は終電があったので断った。

「また、ここに来ます」

J:「来てね、でも君はこの世界に入らないほうがいいよ」

「でも、この世界の恋人に出会うためには・・・」

J:「今まで入らなくても、出会ってきたんでしょ。君の世界は違う、ここじゃない」

そう言いながら、彼女は近くに会った生け花からバラを引き抜き、私に渡してきた。
私はそのバラを受け取った。
少し寂しかった。

J:「私も、君が好き。」

「ありがとうございます」

J:「それだけ?」

「え?そ、それだけ・・・?」

J:「持ち帰らないの?チャンスでしょ?」

「あ・・・」

J:「これが、住む世界が違うってこと。でもね、Hが君に惚れた理由はよくわかったよ。」

バーを出て、一人で歩いて帰った。

彼女に好きだと言われ、世界が違うと言われ、
メールで出会うことができなかったので、実際の出会いを探しにやって来たのに、その自分の行動を否定されてしまったようで悲しくなった。

そう考えながらとぼとぼ歩いている、さっき通った見覚えのある道に出た。
そこは、Hさんと通った道だった。

この道を左に行けば、Hさんの家がある。

そう思った時には、すでに足は左へ向いていた。
しばらく歩くと見覚えのあるコンクリートの建物があった。

ここだ。

Hさんの部屋には、明かりが灯っていた。

あの明かりは、恋人が部屋にいるということだ。
Hさんを待ってみようかな、そう思ったけれども、本当に終電の時間が迫っていた。

しばらくその明りを眺めていたのだけれども、

私は部屋の入口に、去り際にJさんからもらったバラを置いた。

Hさんとはもう出会うことも無いだろう、と自分に言い聞かせ、岐路についた。


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