突然のカミングアウトを受けて。3

ロッカーで40分ほど話を聞いていた。

彼女は、涙を流すこともなく、一言一言、言葉を選ぶかのように、ぽつりぽつりと話してくれた。

 

 

 

私は、言葉がなかった。

 

 

 

でもね、聞いて思い出したんだけれども。
私もね、貴女の年齢の時に、仕事を辞めたくて仕方がなかったことがあるよ。
その頃はね、自分が社会でどんな役割を果たすことができるのかわからなくなった時期だった。
私に恋人がいることは知っていると思うけれども、その恋人が現れるまでは独りぼっちで、毎日遠くばかり見つめていた。
側に何をするでもなく、ただ単に命という炎があるのであればその炎が揺らぎ、時に弱くなったり持ち直したり、そんな光景をただただ見つめているかのように、じっと。

じっとね。悩んでいた時期があった。

だからね。
だからね、その仕事を辞めたいという思いは、わかるよ。
本当にわかる。

恋人に振られて傷ついた心も。

私も振られたことがあるから、わかるよ。

寂しいよね。辛いよね。

 

その思いを振り払うためにも、何かを変えたいんだよね。

人生について考えるよね。
私も人生を、仕事を変えたかったし、とにかく今の環境から逃げたかった。
全てから逃げて、誰も知らないところで、何もないところからやり直したいとさえ思った。
だけどその時期は1年ほどで過ぎ去ったのだけれども。
そのきっかけは、異動だった。
環境が変われば、全てが変わったの。
だからね。
もしかしたらあなたのその今の思いも単なる結婚願望からきているだけではなくて、もしかしたら社会と自分の関りを考えている間に自分が生み出した変わるための手段なのかもしれないよ。

 

 

 

彼女は涙がたまった充血した目で、私を見ていた。

 

 

 

あとその、障害の件だけれども・・・
今まで私は、あなたのことをそう考えたこともなかったのだけれども、今日話してくれたのは、何か理由があるの?

「カウンセリングで言われたのです。自分の殻を破る方法を考えてみればと。なので。feelさんは障害などでは判断されない人だと日々思っていたので、お話させていただきました」

 

 

ずっと、職場の様子を伺っていたのだろう。

ずっと。

 

 

そっか。
障害を公表することも、そのまま黙っておくことも、私はどちらも正しい選択だと思うよ。

そのことを自分の殻を破ることだと考えているのだったら、自分が好きな時に、好きな方法を選んだらいいのだよ。

だけれども、あなたが言うように、障害の有無で人を評価する人もいるだろう。

耳が聞こえないから相手にしない人もいるし、目が見えないから相手にしない人もいる。
でも、それは一見障害を持っていないように思える人でも経験していることで、性格が合わなければ相手にされなかったり、能力が無ければ土俵にも上がることはできない。
そんなことない?
あるよね。

障害が目に見えるか、心の中にあって見えないのか、目に見えるか、目に見えないか、その違いなだけで、
普通に見える人も、それなりに障害を持っているのかもしれない。

障害をカミングアウトすることで大切なのは・・・

 

私も人に教えてもらったことなのだけれども、
する側の問題ではなく、される側の問題が大きいかもしれない。

される側の心の準備ができて、初めて理解されるのだと思う。
土壌というのだろうか。

だから、急に髪を短く切って耳を出し始めたりと、一人だけでカミングアウトをすると、少しみんながひるむかもしれないね。

いっそのこと、次回の課内研修で「声が聞こえる仕組みについて」とか、やってみる?
最近、声が聞こえにくいおじいちゃん上司たちがいるでしょ?

その話と掛け合わせるとか。

耳が聞こえるのはこのためです。おじいちゃん上司はこれが弱まってきました。でも生まれつきこういう機能が働かず、聞こえない人もいます。考えたことがありますか?って。

そうやって、あなたがカミングアウトできる土壌を作れたらいいなと思う。
もしよかったら、私がやるよ。

そして空気を読んで、その耳を出してくれたらいいんじゃないかな。

あ、それも急な展開?

 

 

彼女は、最終的に自分がみんなの前で、自分の大切にしている機械の耳を公表しているところを想像したのでしょう。

 

「計算が崩れました」

 

そう、大笑いをしていました。

結婚だって、彼と結婚していたから幸せだったとは限らない。
だって、元カノとよりを戻したいんでしょ?
結婚しても浮気されて、生まれた子供には「クソババア!」って言われながら、バナナを投げつけられる可能性だってあるでしょ?
どんな人と結婚したいか、その結婚したい人が自分のような人を好きになってくれるか、その歯車が合わないといけないよね。
毎日手術室に入ってて、夜は赤肉とワインを嗜む年収1,000万のお医者さんがさ、「今日は何しに来たの?」って窓口で認知症のおじいちゃんとお茶飲んでる人を好きになることは、あまり考えられないと思わない?
いい人はね、いるよ。
絶対にいる。

だから、今は自分の心と向き合って、どうしたいか考える時期なんだと思うよ。

 

 

 

 




つづく。



にほんブログ村 セクマイ・嗜好ブログ 同性愛・ビアン(アダルト)へ
にほんブログ村
↑ 他のビアンの方々のブログも、
良かったら覗いてみてください。