日常の一場面

【12】音の誘い。私を気にしてくれる女性の存在。

Feelは大学まで来ている。
なぜなら大学の駐車場に車があるから。
でも授業に出席せず、どこかに行っている。

 

 

そんな私を気遣ってくれる人が現れた。
T姉さんという女性だ。
私が、大学から少し離れた、
とあるホールでをケストラ奏者の卵さんの演奏を聞いているところに、たまにT姉さんもいた。

 

はじめは彼女がそのホールにいたことに気付かなかったのだが、
自分の授業中にT姉さんと自分のグループの友人が話をしているところを見て

「どこかで見たことがある人だな・・・あ!」

という感じで、彼女が同じ学科だったことに気付いた。

 

 

彼女は早い段階で私に気付いていたようで、いつも私よりあとにホールにやってきて、
私の視線に入ってくるように座っていた。

そしてその距離はだんだんと渡しに近づいてきて、

「とうとうこの日が来たな」

と私が思った日には、彼女は私と同じ列に座り、並んで演奏を聴いていたのだった。

彼女が私を意識しているのは、大学でも気付いていた。
彼女の視線を感じていたのだ。
特に話をしたことは無かったのだけれども、時々目が合っていた。
私が眉を上げ、

「やあ(こんにちは)」

というジェスチャーをすると、彼女はウインクで返してきた。
彼女はそういうキャラクターだった。

 

 

演奏しているをケストラ奏者の卵たちは、指導されると、だんだんと音が変わるんですよね。
成長が音として聞こえて、エリートの理解力に感動したものだ。
私は、すっかり人生の目標を失っていた。
自分がビアンである事実、
そして男性には勝てないということ。

 

 

あのホールの場は、私にとって自分の時間が止まってしまった中での唯一の楽しみだった。
だから、本当は誰にも関わられたくなかったのである。
人知れず、こっそりとその楽しみを味わいたかったのだが、
T姉さんが現れてしまった。

席が近づくと、沈黙に耐えることができなかった。
私の方から、T姉さんに話しかけはじめた。

 

「今の音、変わったね」

T姉:「あれはね、○○っていう演奏法だよ」

 

彼女の思わぬ反応に驚いた。
T姉さんは、バイをリンを弾くことができた。

実際、彼女は自分の演奏の勉強のために、彼らの音を聴きに来ていたらしい。
彼女は毎回授業時間にはいなくなった。

 

 

ただ、私と話ができるようになると、だんだんと私に授業に出るように促し始めた。
授業に行きたくない私は、

その会話だけ、聞いて聞かぬふりをしていた。





▼ランキングに参加しています。




にほんブログ村